2011-04-27

迷い道 くねくね

例年に比べて、3週間ほど遅れの25日ぐらいから、市内の小中学校は一斉に(やっと)始まったようです。

歩道脇の緑の中に黄色の花を目にするように、学校に向かうランドセルが踊る中にも黄色い帽子を目にして日常を感じました。

下駄箱のスノコに躓いて転んで、スノコの継ぎ目に刺さったままの脱げた上履きズックを見ながら泣いたことや、半ズボンを履いた男子は皆白いタイツを履いていましたが、私だけが肌色のタイツを履いているのに気づいて、仲間外れにあっているような顔で集合写真に収まったことや、地区ごとの集団登校では登校班班長の兄が変によそよそしくて妙に厳しかったことや、三年生のキヨシくんが、いつも集合時間ギリギリなので遅刻してしまうんじゃないかと、無駄にドキドキしていたら、オシッコを漏らして結局遅刻してしまったことや、────赤信号に足踏みしているランドセルを眺めていたら、思い出さなくても良い記憶ばかりが青信号に変るように灯りました。

小学校の始まるのが遅れた分、夏冬休みは削られて、子供達は意気消沈していますが、父母達は意気揚々な感じです。

先日、ちょうど岸本佐知子さんのエッセイ集を読み終えた時のことです。
エッセイの中で、たびたび川上弘美さんという作家の方を目にしました。「あるようなないような、やっぱりあるような(気になる部分)」という章で「カワカミさん」として書かれていたりして、川上弘美さんの作品を読んでみたいと興味を持ちました。
ちょうど読了した次の日ぐらいに、いつもお邪魔させて頂いている先で「センセイの鞄(川上弘美)」のことをお書きになっているのを目にしました。「なんという(偶然のタイミングな)ことでしょう!(加藤みどり調)」。あぁ、なんてシンクロニシティ!シティー!シティー!ホンダ!ホンダ!ホンダと、ひとりマッドネスで興奮のるつぼに陥ってしまい、なんだか、あらためて地動説が正しいことを実感して、早速、南アメリカに広がるコーヒー色した大河に向けて、マウスを漕ぎ出した次第で御座います。えぇ
物心ついた頃だったと思いますが、風邪を引いて内科医院に行った時の事です。
リノリウムが独特の匂いを放っていて、それに蓋をするように粗末な黒の長いすが等間隔で並んだ待合室です。正面に天井にぶら下がるようにテレビが据え付けてあります。隙間なく長いすに座った人たちは、口を開けてテレビを食い入るように見ています。ブラウン管の中では、クレーンに吊るされた大きな黒光りした鉄球が、左右に力強く大きく揺れながら建物の壁を容赦なく破壊していました。────というシーンが幾度か頭の中で流れて、「センセイの鞄」が映像化(DVD)されている事を知りました。コンビニで当然のように聞かれる「おにぎり暖めますか?」は、北海道・東北地方しか聞かれないという事実を知った時ぐらいの衝撃でした。いい大人になるまでの間、小泉今日子さんのファンを標榜にしていたので、仕事帰りにレンタル店をはしごしたのは言うまでもありません。
今週はなんだか、まわりはすでにゴールデンウィークな雰囲気で、手持ち豚さと誤変換するぐらいに手持ち無沙汰な感じです。

2011-04-26

therefore

昨日は朝から穏やかな午前中でしたが、脳に向かうはずの血液が寄り道をはじめた頃に、ふと目を上げた窓の外が瞬く間に暗くなりだして、湯飲み茶碗の柄みたいにアスファルトが本来の色を取り戻し始めました。

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そうしているうちに、窓を叩く音が次第に高くなりだして、窓から見える法面の木々の葉がせわしなく挨拶を始めました。次第に腰の折れる角度が段々とキツくなりだして、頭を下げっぱなしの土下座状態になりました。
席を立って、窓から向かいの駐車場を見ると、空から消臭芳香ビーズみたいな球体が降り落ちて地面で激しくバウンドしていました。

一瞬、目が眩むように明るくなると、すぐに、向かいの同僚が失注した見積書を派手に破いているような音がしました。またかと思っていたら、地響きがして、またかと思ったら、雷でした。
地響きが長すぎて余震なんだか何なのかわからず、ちょっとしたパニック状態に陥りました。
ほんの15分ぐらいの出来事でしたが、正直、この世の終わりかと思うほどの光景でした。

窓を風が揺らして雹が叩き、雷が旋律を奏で地響きが牽引する、フレーミングが絶妙なインプロヴィゼーションでした。

思えば、昨年大晦日のこと。
夜中の3時ぐらいから、激しいみぞれと雷が降り出しました。
なにより、雷の威力は強大で、規則正しくカーテンを物ともせずに真夏の太陽のように照らし、轟音を轟かせて震度4ぐらいで家々を揺らしました。
近所の大きなスーパーマーケット辺りに落ちて、火の手が上がり、周辺の信号機や家々は夕方ぐらいまで停電になりました。

とはいえ、人間、慣れというものは恐ろしいもので、昼前には稲光と轟音は日常の一部と化してしまって、冷静に眺めていれるようになりました。
結局、夕方3時ぐらいには、雷も雪もフェードアウトしていきました。
この時降った雪の量は結構なもので、翌々日に旅行で降り立った北海道で、あまりの雪の少なさに拍子抜けしたほどでした。

東北に住んでいますが、太平洋沿岸地域は、冬の季節でも雪が降って積もることは滅多にありません。余裕で片手で数えるぐらいなのですが、年が明けて2月は、結構というか、相当降った月でした。近年稀に見るほどの量でした。市の除雪費が2月だけで底をついてしまったとか度々耳にするほどでした。

そして3月はその通りでした。

最近、リアス式海岸がノコギリの刃が欠け落ちるように海に沈む夢を見ます。
今日のような快晴で気持ちのいい穏やかな日には、例え、風が運ぶものにくしゃみが止らなくても、平穏な日をなるべく満喫しようと思います。




2011-04-22

今週のお題は「私の小さなこだわり」です

一昨昨日、今週末に車検満了となる車で、近所のカー用品店に向かった。

カウンターで対応したのが、偶然にも同級生だったため、あの日にこうしていたら、こうなってこうだったとか話してたら、なんだかお互いの自慢話みたいになってきたので「車検をお願いしたいのだが、どうだろうか」と何の脈略も無く切り出した。
「いま?」
「いまというわけでもないが、結構逼迫しているのだが」
「震災の影響で5月11日まで大丈夫だよ」
「おかげでここ数日の溜飲を下げることが出来たよ」と言った後、文化庁が発表した平成19年度「国語に関する世論調査」で間違った言い方「溜飲を晴らす」を使う人が26.1パーセントという結果を、ふと思い出した。
「車検をスムーズに通すためには、車検見積りが必要で、それには事前に車の状態を確認させてもらうことになるけど...」
「いいよ、してよ、いま?」
「...で、見積もりには、事前に予約が必要なんだけど...」

一昨日、車検の見積もりをする車で、あらためて近所のカー用品店に向かった。
カウンターに同級生の姿はなく、爬虫類顔したやせぎすな女性が対応してくれた。
車検の見積もりの予約票みたいな紙を差し出す。
「車検のお見積もりですね...」
「一昨昨日予約した者です」
「一時間ぐらいかかりますけど...」

奥のトイレで用を済まして、左向かいにある待合室に入る。入ってすぐの左側は漫画コミックを貼ったような壁があった。本棚をざっと見渡すと、一定方向に偏りがある漫画ばかりが並んでいた。「ビー・バップ・ハイスクール」「シャコタン・ブギ」「湾岸ミッドナイト」「湘南爆走族」「ろくでなしBLUES」、「バリバリ伝説」「頭文字D」。「クローズ」や「特攻の拓」あたりが無いところにある種の拘りと、正面にある大きなガラスの外の整備工場で、あくせくと動き回るオレンジ色のつなぎを着た従業員の過去を垣間見た気がした。

とりあえず、シエロシ羊介くんが主人公の漫画を読むことにする。
横須賀ハッスルジェット編は3巻?4巻?と記憶をたどって手を伸ばす。むぅぅぅ。1巻から並んでいるのだが、6、7巻あたりから怪しくなり、10巻以降であからさまに順不同になっている。むぅぅぅ。気づくと我慢できずに揃え直してしまっていた。

一息ついて、あらためて目当ての数巻を手にして、右手奥にある椅子に向かおうとしたら、下の方に「ろくでなしBLUES」の8巻から12巻までが目に入る。むぅぅぅ。ちょっと気になって、背丈をちょっと越えるほどの本棚をざっと見渡す。ちょうど対角線上、向かって左上あたりに1巻から7巻を発見した。むぅぅぅ。とりあえず、8巻以降ある場所に移動させようと思ったのだけれど、1巻から7巻を収納できるスペースは当然あるわけがない。むぅぅぅ。8巻以降が置いてある隣に「プレイボール(ちばあきお)」が、中途半端に歯抜けした状態で10冊ほど置いてあった。熱血不良青春漫画の隣に、熱血野球青春漫画をこのまま放置することも不憫な気がしたので、迷うことなく、フリッツ・フォン・エリックよろしくアイアンクローで移動させて、無事に「ろくでなしBLUES」も揃え直した。

ふと、しゃがみこんだ先で、縦に並ぶ本の列と本棚の仕切りの隙間で横になって、そっぽを向いている本を目にする。むぅぅぅ。迷子の本「ロンタイBABY」2巻を手にして立ち上がり、むぅぅぅと仲間を探し出して無事に送り届ける。

一歩下がってあらためて本棚全体を見てみたら、余計むぅぅぅとなってしまって、結局、見積もり完了のアナウンスを聞くまで本棚の整理をしていたことに気づいた。むぅぅぅ。

提示された見積書に「▲本棚整理費用」の記載は、当然見当たらない。

2011-04-21

決まり手は勇み足

オブシディアン(黒曜石)のような黒目が印象的で、6.23:3.77ぐらい微妙な髪の分け目がチャーミングな女性に「揺れ動いているのは、あなたを想う気持ちからなの...」と、すっかり忘れかけていた情景な夢を見ていたら、揺れ動く余震で目が覚めました。

細々と蓄えをして、色々と夢見ていたものは、まんまと細君の誕生日に姿を変えてしまいました。 結婚10年の節目だったのでオープンリーチしたわけです (正確には11年目だったのでフリテンリーチだったわけですが)。
今までも、そうしてきたようにそのようにそうしたわけで、今までどおりに見返りを求めているわけでもありません。

が、一番古株のコンデジを実母に勢いであげてしまったり、子供らの運動会が例年通りに5月中だとすると、一眼カメラのレンズはつけっぱなしが良いなぁなどと考えてると、蝸牛あたりで ほらほらコレなんかと、不成仏霊に憑依されたようにヒソヒソと聞こえてきます。
そんなことを悶々と考えてゆるゆると揺れていると、来月誕生日だったことを思い出して一気に期待は膨らみました。

が、来月の誕生日という日は、────以下、色々と自粛しておくことにします。

と、いうことで、今までどおり見返りを求めないということで、なんだか解決したわけです。

で、結局なにが言いたかったかというと、サブ機にオリンパスのXZ-1 を夏までに手にしたいということです。なにより黒ボディに惹かれます。

 OLYMPUS デジタルカメラ XZ-1 ブラック 1000万画素 1/1.63型高感度CCD 大口径F1.8 i.ZUIKO DIGITALレンズ 3.0型有機ELディスプレイ XZ-1 BLK

2011-04-20

丁字路を右へ

破傷風に十分注意 がれき撤去で感染の恐れ 医療関係者ら呼び掛け

被災地では、作業中にがれきでけがをしたり、くぎを踏み抜いたりする危険性がある。さらに衛生状態も悪く、けがをしても水が十分に使えない場合もあるため、感染の可能性は高まり、すでにボランティアに患者が出たという。

河北新報 東北ニュース(2011年04月12日火曜日)より一部抜粋
破傷風は、とても恐ろしく怖い病気であると、トラウマになるぐらいに教えられた映画があります。

日々、繰り広げられるホルモンと細菌と皮脂の、壮絶な三つ巴の戦いの傷跡が顔に広がり始めた頃、週末に届けられた新聞のテレビ欄深夜枠に、テストステロンの分泌量を促すタイトルを発見しました。枕元に靴下を用意するような気分で、なんら迷うことなくタイマー録画をセットした記憶があります。

「うぎぁぁぁぁぁーーーっ!!!」
ジャンル的にヒューマンなのだろうけど、下手なホラー映画よりも十二分に恐怖以上のものを感じました。今の精神的に苦痛を感じるホラー映画の原点とも言えるかもしれません。残念ながら、断片的な記憶しかないのですが、その大半が破傷風に感染した小さな女の子が、もがき苦しむシーンばかりです。
監督が野村芳太郎ということもあって、トラウマ克服のために観返したいと思っているのですが、残念ながら、DVD化されていないようですし、近所のレンタル店にも置いていません。ビデオデッキが生きているうちに、なんとかしたいと真剣に考えています。

中々踏ん切りがつかずに、しばらくアマゾンのほしい物リストに入れていた本ですが、西にお住まいのキャディさんがフォロー(追い風)ですと言って、ドライバーを差し出してくれたので、心置きなくフルスイングしたのですが、風に乗り切れなかったのか、あえなくラフの中へ(一時的に在庫切れ; 入荷時期は未定です)。素直に近所の書店に注文することにしました。
最近、活字は読みたいのですが、なんとなく物語を追う気分ではないので、エッセイ集ばかり読んでます。そのうちの一冊、翻訳家の岸本佐知子さんのエッセイ集です。
これは文句なしにおもしろかったです。読んでいて普通に声を出して笑ってしまいました。引き出しの多さと洞察力、なによりも文章力に惹かれました。最初のニつ三つ読んで早速追加でポチり。
エッセイ集でリハビリした後、「岸本の翻訳作」を読み漁ろうと思ってます。
ただ、「東日本大震災の影響で配達できないエリアです」というメールには結構凹みます。


BAWDIES!まさかのAI とのコラボ!! 
これはやばいやばいやばいいぇいいぇいいぇーぃ!

 

2011-04-19

渋みがつよいスプモーニ

震災後は、自分のキャパをはるかに超える、受け入れがたい現実に飲み込まれそうになるため、自分でエラを動かすことが出来ないマグロのように、生きるために泳ぎ続けるような日々を過ごした。

ライフラインが落ち着いた頃、気分転換にDVDをトレイに載せるも、途中で集中してストーリーを追いかけることが億劫になってしまい、プチりとレジュームレジュームレジュームと足踏み。映画を観たいのだけれど、持続しない精神状態にディレンマを感じる日々。

先日こと。余震が続くたびに、容赦せずに本棚から吐き出される映画DVDが山のようにあるにもかかわらず、リハビリには新しい環境が必要なはずだと、突然思い立ってレンタル店に向かった。

隣接しているコンビニと出入り口を共有しているレンタル店。
コンビニ側の乳歯が抜けた子供の口みたいな本棚がある、駐車場に面した大きな窓ガラスは激励の文字が書かれた貼り紙に占拠されている。
その隅に申し訳なさそうに「タバコあります」と書かれた貼り紙を見つけて、安堵感を覚えた。
私は彼女(長女)が生まれると同時にタバコをやめているので、ふるふると震える黄ばんだ指先が止まるぐらいの安堵の思いではなく、「タバコあります」を通して戻りつつある日常を実感できたから。
夏の季語として定着している「冷やし中華はじめました」という貼り紙を、その年はじめて目にしたときに似た気持ち。

ガソリンスタンドの「ガソリンあります」の貼り紙が剥がされて通常営業に戻り、ガソリンを求める長蛇の列は数日で消えた。いまだに空気を置いている棚が目立つ店もあるが、コンビニも24時間ではないけれど営業をしている。ファーストフード、レンタルビデオ店も然り。
  • 「《ハリウッド最強のアクション・スター》たちが結集したドリーム・プロジェクト!」なのだけれど、ありがちで安っぽいストーリー展開
  • せっかくのアクションシーンは、暗闇の中で目まぐるしく変わるカメラワークで正直なにがなにやらで誰が誰やら
  • 誰よりもUFC殿堂入り選手(鉄人)ランディ・クートゥア。その勇姿を眺めることが出来たので良しとする
  • ある意味、開き直ってハチャメチャな感じが期待を裏切らなかったし、「96時間」に続いてリーアム・ニーソンは最強だったのでよかった
  • フェイス(ブラッドレイ・クーパー)とソーサ(ジェシカ・ビール)はバレンタインデーにも共演してたなぁとか
  • 誰よりもランペイジ・ジャクソン。佐竹雅昭を頭蓋骨骨折に追いやったような技で決めてくれたシーンで満足した
...等など、色々と観はじめましたので、困った時のためにまとめておこうかと。


復興とは、ある日を境に止ってしまった日常が正常に動き出すことだと実感した。

2011-04-18

穴のあいたポケット

両側に大型のホームセンターやドラッグストア、酒のディスカウント店、コンビニエンスストアが建ち並ぶ片側二車線の先は、緩やかな登り路。

ちょうど天辺あたりに信号機がある。左脇の歩道に「この先一車線」「車線減少」の黄色地に朱書きの立看板が、ドミノの様に並び、花粉と乾いた泥粉を運ぶ風に平べったい音を立てながら揺れている。

行く先で一台分の前後が入れ替わるに過ぎないのに、自信満々にウインカーを下げて、意気揚々と右車線に移った軽自動車が右のドアミラーの中に入る。
信号が青に変わるか否かのタイミングで、タイヤを軋ませてスタートダッシュする。緩やかな下りの右コーナーに入る直前で、左ウインカーをあたふたと点滅させて、つんのめった感じでブレーキランプを数回点灯させて車線変更した。
乾いた土煙が視界を土色にした。

しかたなく減速した先は海に続く路。津波に力任せに奪われた復旧したての路。
道路沿いには、長い棒を忘れて綱渡りしているような、コンクリート土台むき出しのガードレールが並べてある。

コントラストを下げすぎた感じのクロムフィルタを駆使したような水面が広がった。
波打ち際から砂浜まで、力ずくで奪ったお礼の品物(残骸)が展示しているように見える。
春の陽気に誘われて訪れたわけでは無いだろう、揃いの服を着た人達で海辺は賑わいを見せていた。

実家に向かう道すがら、瓦礫の山に僅かな駐車スペースを見つけて車を寄せた。
思春期のように頑なに閉ざしたままの水門を乗り越え、防波堤沿いを歩いて海へ降りる。
リングで大の字にされて、トップロープに駆け上がる相手選手を見たときのように覚悟は決めていたが、見慣れた海の風景は一変していた。

近年、急速に綺麗過ぎるぐらいにコンクリートで敷き詰められていった船着場あたりは、泥と海の下に埋もれていた。不自然に囲んでいた堤防も姿を消していて、眺めの良い湾内に様変わりしていた。

木造の桟橋、船着場、作業小屋が、端からテトラポットとコンクリートに侵食されて行った、幼い頃の覚えている海の形に戻ったような感じだった。
雑多なものが入り混じった波打ち際もそうであるが、なにより海が近くに感じた。
四、五十センチ沈んで(地盤沈下)しまった影響からだろうか。

歩み寄りを見せる海に静かな恐怖を感じた土曜日のこと。

 


2011-04-15

Bruce Lee- Be water my friend


 

「さっきマインドを空にしろと言ったよね、
 カタチを無くすんだ、カタチを無くすんだ、水のようになるんだよ
 水はコップに入ればコップの形になる、
 ビンに入ればビンの形になる、
 ティーポットに入れればティーポットの形になるんだ
 水は流れることも出来るし割れることも出来るんだよ
 水のようになるんだよ・・・」

 

脱皮できない蛇は滅びる

今回の災害により、目に見える被害と、目に見えない被害が発生した。

目に見える被害の復旧状況は日々目にして確認できるが、目に見えない被害の復旧状況は耳にすることしか出来ない。これにより風評被害という二次的災害も発生しているのが現状。

市町村合併などを機に、イメージアップを目的として「ひらがな」表記に変えた県を目する。これとは逆に、ウェブ、新聞紙上で、いつの間にか「カタカナ」表記された県を目にする。

風評被害を否定する記事のすぐ隣で、「カタカナ」表記して特別視させる記事。矛盾しか感じない。目に見えない被害の復旧作業は、まず、「カタカナ」表記をやめることだと思う。

 

2011-04-13

降っても晴れても踏んだり蹴ったり

その店の前を通ると、裏の自動車整備工場で軽自動車みたいなクラウンが横転している様子が見えます。そのたびに、私立探偵スペンサー・シリーズがハードカバーで全巻揃っていて一冊百円だったにもかかわらず、手に入れなかったことを後悔してしまいます。

震災後、色々とあわただしく過ごしていましたが、時間を見つけて読んでいた本です。その店で最後に手にした本でもあります。
はじめての村上春樹作品は1Q84でした。それから村上春樹作品に興味を持ち、次の長編に手を伸ばす前に数冊の短編を読んで準備しました。一応準備万端整って読んだ長編です。

村上春樹作品を大して読んでいるわけではありませんが、読むたびに丁寧な描写表現や、独特な比喩よりも、逆説の接続詞に魅了されてしまいます。だからと言って頻繁に使われているわけでは無いと思います。

次の長編は「アフターダーク」と決めているのだけれど、僕が帰る時刻(ころ)には、震災の影響からか、多くの書店は早々に電気を落としている。「やれやれ」と僕は思った。

────と、一応、逆説の接続詞を入れた文章で締めておきます。

2011-04-12

暗くなる前に

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今回の震災を体験したことによる備忘録です。
  • 停電になったら断水のための準備をしましょう。

    • 水をくみ上げるために電力を必要するらしいので、停電後は水道管の中に残っている水だけしか出ません。時間の問題で断水になると思います(地域性や特殊な場合は除きます)。
    • 計画停電の場合は事前に水を確保できると思いますが、震災によって停電になった場合、水が出るうちに汲み置きしましょう。
    • 飲み水用に収縮自在(折りたたみ可能)のウォータージャグを数個用意して置くと便利です。
    • 生活用水としてバスタブに水を溜めましょう。バケツなどにも汲み置きしましょう。
    • 断水して一番困るのは、トイレで用を足した後です。当たり前のことですが、水のタンクを背負ったタイプの便器では、タンク内にある分の水が無くなってしまえば水は出ません。空になってしまったタンクに生活用水を入れ足せば流すことは出来ますが、必要以上に水を消費してしまいます(小でタンク内の1/4程度、大で1/2程度は一回毎に消費します)。汲み置きした水をトイレに置き、用を足した毎に便器に水を入れて流したほうが水の節約が出来ます。小の場合はコップ一杯分程度、大の場合は500mlぐらいあれば流れます(もちろん量により左右されます)。ただし、使用したトイレットペーパーは一緒に流さずに、ゴミ袋に入れることを前提とした場合です。

  • 食品、飲料水に次いで電池と懐中電灯の棚は空っぽになります。

    • LEDライトの懐中電灯(電池式)、手回し充電式の(LEDライト)懐中電灯、最低でも二つ用意して置くと安心です。電池式は予備の乾電池を用意しなければなりませんが、エネループに代表される充電池にしたほうが良いです。停電なのに充電式?については後述にまとめます。主に電池式の懐中電灯を使用して、予備に手回し充電式と考えたほうが良いです。震災時には何かと労力を使ってしまうので、手回しするだけでも結構ストレスに感じます。
    • 可能であれば LEDランタンも用意したほうが良いです。暗闇は不安を増幅させてしまうので、まわりが明るければ気持ちも明るくなります。
    • 車を所有している場合は、シガーライターソケットにプラグを差し込むだけで、家庭用の電気製品が使える電圧変換器を付けておくと便利です。エネループも車で充電出来ますし、携帯電話なども充電出来ます。ただし、バッテリー上がりのトラブルや、ガソリンが給油できなくなる場合もあるので注意が必要です。
    • 携帯ラジオは必需品です。ポケットに入れても苦にならないぐらいものを選びましょう。多機能で手回し充電式懐中電灯に付いているラジオは、予備として考えたほうが良いです。理由は先述の通りです。それと大きすぎると何かと不便に感じます。ちなみにラジオの平均的な電池寿命は50時間ぐらいらしいです。

  • 停電で断水ならばカップ麺は非常食というより非常に贅沢な食です。

    • 非常食はフリーズドライタイプのご飯類がお勧めです。ご飯の種類も豊富で、少しのお湯で湯煎するだけとか、水でもOKだとか、紐を引っ張るだけでOKというものまであって、多種多様です。
    • おかずは保存が利く缶切不要のプルトップ缶詰が良いのですが、蓋になるものを必ず用意して置いたほうが良いです(またはタッパウェアにあけるとか)。
    • 脳を活性化させるために、クッキーなどの多少歯ごたえのある、甘いものも用意すると良いでしょう。

  • その他、諸々...。

    • 靴下は古くなって、多少穴が開いていたとしても色々と使えます。足先の寒さ対策はもちろんの事、つま先の部分を切り落とせばサポーター代わりにもなりますし、親指の部分だけ穴を開ければ手袋代わりにもなります。無理すれば氷嚢にだってなれるかもしれません。たぶん。
    • ガスが止まった時点で、速攻でカセットコンロは陳列棚から姿を消します。ただ、一本のボンベで一時間程度しか使用できないので経済的とは言えなませんし、余計にゴミを増やすことになります。
    • 逆に、反射式の石油ストーブがあると何かと便利です。暖を取る以外に、煮る、焼く、沸かすことが出来ます。キッチンホイルがあるだけで、用途は格段に広がります。他に濡れたものなどを干すことも出来ます。燃料である灯油なのですが、ガソリンが枯渇の状態だった頃でも、比較的早い段階で入手できるようになりました。
    • 携帯電話についてですが、地域による様々な事情で異なると思いますので、あくまでも事例として書き記します。
      • D社のものは、震災直後すぐに使えなくなりましたが、震災地より離れた場所では使えました。使えたといっても、震災地のD社の携帯電話や固定電話には、もちろん通じません。震災を受けなかった地域へは使えたということです。震災後三日ぐらい経ってから限られた場所で使えるようになりました。全域で使えるようになったのは震災から一週間後のことでした。
      • a社のものは、震災直後でも使えましたが、a社の携帯同士でした。二、三日後には使えなくなり、十日ぐらい経ってから使えるようになったらしいです。D社のものと逆転した感じでした。
      • S社のものは、震災直後すぐに使えなくなり、十日ぐらい経ってから使えるようになったとか。

  • 震災に限ったことではありませんが、長靴を履く場合、アンクルソックスは基本NGです。理由はアンクルソックスで長靴を履いて、とりあえず歩いてみればわかると思います。そんな感じです。

2011-04-11

寡黙な信号機

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電気復旧作業中の幹線道路上に立つ多くの信号機はいまだ眠ったままです。
交通量の多い場所には、警察官が立って交通整理を行っているらしいです。「らしい」というのは、九時五時できっちりと労働しているみたいなので、私は交通整理をしている彼らを見たことがありません。九時五時で交通整理。
しかしながら交通事故多発しているという話は聞きません。

震災直後の数日、すべての信号機は入社したてで緊張しきった新入社員のように反応しませんでした。また主な幹線道路は瓦礫が残っているため、通行止めの箇所が多々ありました。通行可能な道路の信号機あたりは、怒り暴走する赤い目をしたオームが連なるようにして渋滞が発生しました。しかし渋滞でながらも道を譲り合っている様子が見られました。道を譲るタイミングは、体が覚えている赤信号待ちの時間で行われているようでした。これは国民性によるものかと思いました。
しかしながら巡回先のお邪魔させていただいているブログで、東京都内で計画停電により交通事故が多発しているということを知り、単に地域性なのだと思いました。

この地域性についてですが、先日、会社に設置している自販機を管理している業者の方と立ち話をしたときの話題(こと)です。
壊滅的な被害を受けた沿岸南部付近では、(先の業者が)設置管理している大半の自販機は破壊され、中身(ジュース類、釣り銭など)は全て奪われていたそうです。津波の被害をまったく受けていない場所(ところ)に設置していた自販機も然り。
しかしながらこの辺り(私の住んでいる市内)では全くそのような被害は無いとのこと。

震災のため被害を受けたスーパーやパチンコ店から金庫が奪われたり、流されてしまった酒類を避難所に持ち込んで酒盛りしたり、配給物資を奪い合ったりなどの避難所でのトラブル、近隣市町村の話として聞きますが、私の住んでいる市(ところ)では一切耳にしません。気性の荒いと言われる漁師町ですが、それだけが救いです。
道を譲り合うのも、ごく限られた地域性なのだろうと思いました。

見上げてごらん夜の星を

最近TV流れているサントリーのCM「見上げてごらん夜の星を」。
このヴァージョンが一番好きです。
矢沢永吉のフルコーラスを聴きたいといったら贅沢ですね。
ショーケンと永瀬正敏には色々と驚かされました。
マッチは、やはりマッチでマッチなのですね。

 

黒い渦

最初の一ヶ月が過ぎた。

勤務先は海岸に沿って広がる街の中心部から、北方面に同じように広がる中心部を繋ぐ山間を通る国道沿いにある。近くには県立病院や、介護老人福祉施設が建っている。いわば「もしも」の場合を回避出来る場所(ところ)にある。

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その日、その時刻、モニターの前で「S」のキーが消えかかったキーボードを打っていた。フロアにあったすべての携帯電話から、エリアメール(緊急地震速報)の音が一斉に鳴った。一瞬、なにが起こったか理解できずに真向かいの同僚としばらく見つめ合った。変な感情が湧き出す前に、洗濯物が片側に寄って脱水をはじめた洗濯機みたいに揺れはじめた。

それまで経験した揺れ方で無いことは判断(わか)った。しばらく様子を伺っていたが、収まるどころか激しくなるばかり。すぐに何の前触れも無くモニター電源が切れてUPS(無停電電源装置)が鳴り出したのを合図に外に飛び出した。

駐車場の車は、さながらライブハウスのモッシュ状態でアスファルトで固めた地面はクラウド・サーフィングみたいに波打っていた。覚えたばかりの遊びを、無邪気に楽しむように大地は大きく揺れ続けた。

細君に家族の無事を確認するも、彼が下校途中かもしれないという会話の途中で携帯電話は圏外を表示して息絶えた。

防災無線が大津波警報を知らせる。
この時点では、誰しも過去の津波がそうだったように、所詮、その程度なのだろうと思っていたはずだ。
開いた携帯電話、開いた車のドアからTVを点ける。
テレビモニターが見慣れた景色、見慣れた建物を映し出す。巨額の税金を惜しげもなくつぎ込んだタラソテラピー、道の駅、レストランや催事場を併設した建物が、黒い水塊に飲まれ、ひしゃげて流されていく様。
4月に予定されている新入社員研修は、どこでやることになるのだろうと冷静に考えている自分。
テレビモニターの先で起こっている現実を事実として受け入れることはできなかった。受け入れたくはなかった。

浮き足立っていると、行き場を失い、とりあえず集荷に来るしかなかった運送屋が、国道はすでに通行止めの状態にあることを教えてくれた。
津波が残した海水と瓦礫による物理的な通行止め。陸の孤島状態。

日が暮れだし、会社での待機状態を考えて色々と準備する。
居ても立ってもいられずに、徒歩で帰りだす社員もチラホラと見られた。入れ替わるように津波被害を受けた市街を見てきた社員が帰ってくる。市内は腰ぐらいまで水に浸かっているだとか、車が何台も重なっている、電信柱に軽自動車がぶら下がっている、家の屋根や車が道を塞いでいるとか、道路には船が溢れかえっているなど、ひとしきり話した後、「もう、なにもかも、なにも無い状態です」と締めくくって目を伏せた。

街中から様々な光を津波が奪った夜。
見上げた空には皮肉なぐらいの夜空が広がり星が瞬いていた。

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2011-04-10

元気ハツラツぅ?

どうしたって、スクリューキャップがイカしている、左の炭酸飲料のほうが断然好きです。

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2011-04-07

冬終いに

昨日は暖かいどころか暑いぐらいの陽気でした。
色々なことが遅々として進まない状況下で、唯一季節だけは着実に進みます。
自然は正直であることを実感します。

毎年のことなのですが、今時期の季節の変わり目で一番頭を悩ますことがあります。車の冬タイヤの交換時期です。

ずいぶん昔のことなのですが、ゴールデンウィーク中にもかかわらず、雪が降ったことがありました。勿論、大した量ではなく、次の日には消えてなくなるほどだったと記憶しています。四葉のクローバーを見つけることより、トラ猫の雄が生まれるぐらいの確率なのですが、そんな月曜朝のテンションほど低い確率の出来事であっても、その時の記憶が邪魔をしてしまい、中々タイヤ交換に踏み切れなかったりします。

天気が良くて暖かな日には、会社の休憩時間に自販機の前で「もう、いい加減(雪が)降ることはないよな」「大丈夫じゃね」「俺、今週末あたりにでも換えようと思ってるけど」というタイヤ交換推進派の会話に、「いや、けど、ほら何年か前にゴールデンウィークの時にさぁー」のタイヤ交換慎重派の否定的な一言で、簡単に推進派は期限延期を決めたりします。
この時期のタイヤ交換は、株式の売買のようなものかもしれません。

毎年寒くなり始める頃になると、ユニクロのサイトが映るディスプレイの前で「パパ、ヒートテックのタイツは要る?」と細君に聞かれます。毎年「要らない」と言いますが、細君は「大丈夫?皆履いてるじゃん、これから寒くなるよ」と必ず返すので「要らない」と返します。ロックアップ *1 から始まる(冬の)序盤の攻防戦みたいな、お約束的な会話です。

下ズボンとか股引、はたまたアンダーウェアの類は、どんなに寒かろうとも履かないと決めています。老いていく体力を受け入れまいという、綿埃みたいな他愛も無いポリシーです。今年も履かずに過ごしました。
ただ案外簡単に綿埃は掃除機に吸われてしまうかもしれません。
今年の冬のみぞ知ることです。


*1:プロレス用語でレスラーがリング中央でがっちりと組み合うこと。主に試合序盤の攻防として用いられる。

2011-04-06

春かたまけて

日々、復旧・復興という無形のものが、有形なものに変化していく様子を目にするだけで、前向きな気分になります。失いかけていた日常に少しずつ戻ろうと思います。
  • 毎日チェックする先のひとつ、 honeyee.com(ハニカム) というサイトがあります。その中で一番に読むのは、長谷部千彩 という方のブログ。ピチカートファイブの小西康陽氏の奥さんで文筆家の方ぐらいということしか知りません。もちろん連載している雑誌の記事も読んだことはありません。とても綺麗な文章を書く方だと思っていたので機会があれば、著書などを読みたいと思っていました。ということで昨日ポチりました。

  • 漫画が好きで定期的に買っていました。細君は漫画に対して否定的な考えを持つ人なので、結婚してからは買うのを止めていました。買ってしまった漫画は、捨てずに今でも実家にあります。厳密には流れず残(あ)りました。昼飯時に休憩しながら、気分転換にと読み返して、今でも傑作だと思ったものや、実写化を願う作品など。
    • 頁から湧き出るエネルギーを感じる作品です。作者の木葉功一はもう少し評価されても良い漫画家の一人です
    • 4巻で完結だった記憶がありますが、見当たりませんでした。4巻はかなり分厚かったはずです
    • 実写化を切に願う作品でもあります。が、主役を演じきれる男優が浮かびません。監督は塚本晋也でどうでしょうか 
  • SFアクション作品です。10巻完結のようですが読んでいません。今なら大人買いしちゃう?な精神状態なので怖いです
  • この作品も実写化してほしいです。これなら海外作品でも世界観は変わらないのでお願いしたいです
    • 「蒼天航路」の王欣太のデビュー作品。この作品はGONTA名義。この頃は、絵も内容も洗練されていない荒削りですが、そこに魅力を感じます
    • 主人公のトーマに雄を魅せつけられる作品だと思います
    • エンスーカー漫画の巨匠である西風という漫画家の作品
    • それまではエンスーカーに関連した作品(代表作「GTroman」や「DEADEND STREET」など)しか書かない方でしたが、漫画家 いしかわじゅんに「双葉社版コミックスに寄せたあとがきに「西風に長い話、暗くシリアスな話、旧車の出ない話を描いて欲しかった。このうちの長い話が LAST MOMENT として発表された」(Wikipediaより抜粋)」とのことです
    • 林海象監督で実写化どうでしょうとか思います
他にも山口貴由作品だとか、連載中の「無限の住人」「ベルセルク」など、
  あげはじめるとキリがないので、この辺にしておきます。

  • ジャンル的にハードボイルドものをよく読みますが、自分の中で大沢在昌、香納諒一は「あっさり系」、原りょう、矢作俊彦は「こってり系」、東直己、逢坂剛、藤原伊織は「こってり系(寄り)」と一応分類しています。(大藪春彦、北方謙三あたりは本家とか元祖としておきましょう)。こってり系寄りの作家、東直己の代表作のひとつに「ススキノ探偵シリーズ」があります。
[シネマトゥデイ映画ニュース] 大泉洋が、東直己「ススキノ探偵シリーズ」2作目の「バーにかかってきた電話」を映画化する『探偵はBARにいる』の主演に抜てきされた。大泉が本作で演じるのは、酒好きで美人に弱く、お世辞にも二枚目とはいえないけれど、街と仲間を愛し、情に厚く、例え自分が傷だらけになっても依頼者を最後まで守ろうとする心優しき探偵という役どころ。
大泉洋、故郷の北海道が舞台『探偵はBARにいる』の主役に抜擢!松田龍平とのコンビでシリーズ化目指し『相棒』に続け!
9月に全国公開予定とのことです。一応期待してみます。一応。


今日は久しぶりに書店とレンタル店経由で帰りたいと思います。ただ帰る頃まで営業しているか心配なところです。

2011-04-05

スコップで拾い上げた先の記憶

中学高校時代はバンドを組んでいた。高校を卒業してからも、その延長で誘われるままに、なんとなくバンドは続けていた。成人になってからは、先輩が変な夢を見はじめてしまい、その方面を真剣に職業として考え始めた。私は水面に漂うプランクトンほどのアマチュアというカテゴリーの中で、バンドを遊び程度にしか思っていなかったので、正直、苦痛で仕方なかった。結局、大きなコンテストを通過出来なかったことを機に、膨らました風船は自然に萎んでいった。

先週末、実家で津波被害の片付けに汗していたときのこと。泥を救い上げていた剣スコップの先が大物を拾い上げた。若い頃にベットの上で熱心に鍛えあげた腰を使って、瓦礫の山へ投げ込んだ先には、泥をサンドイッチの具にしたような楽譜の山。ねずみ色になった軍手で泥を拭う。24年ぐらい前のちょうど今頃に、必死になって練習していた曲の楽譜。

予餞会を数ヵ月後に控えたある日のこと。友人の部屋で竹で出来た塊を崩して混ぜては並べて積み上げながら、暴力的なスリーコードで叫び系のジャンルではなく、あえて意表をついたジャンル(こと)を演ってみるのはどうだろうと話をしていた。面子からあぶれてしまった友人が、何気につけたテレビから流れたCMソング。高校一年の時に偶然 1stアルバムをジャケ買いして以来、好きになったバンドの曲だった。

その日のうちに点棒そっちのけでバンドスコアを持っている先輩のもとに向かった。翌日、久しぶりに学校に行って職員室でこそこそとバンドスコアをコピーした。なにか理由をつけては、覚えたばかりのアルコールを口にする会を開くたびに「六本木心中」と「翼の折れたエンジェル」を熱唱していた同じクラスの女友達に、ダビングしたテープとバンドスコアのコピーを渡した。それ以上、大して用も無かったので校舎を後にした。

私はバンドでヴォーカルを担当していた。今回、コピーをチャレンジするバンドではヴォーカルがサックスを吹いていて、重要なメロディーラインを奏でている。その頃の私は上手にホラを吹くことは出来たが、サックスを吹くことなど出来なかった。
しかし幸いなことに仲の良い先輩が珍しいソプラノサックスを持っていたり、吹奏楽部でアルトサックス担当していた小中高と腐れ縁で、幼馴染の女友達が近所に住んでいた。

今ではコンクリートの基礎しか残っていない、その当時に小屋が建っていたその場所で、夜な夜な、時には明け方まで夜鷹(ヨタカ)は鳴いた。時にはうまいこと吹くことが出来ずに泣いていたときもあったのかもしれない。初めて出来る限りの努力した時だったかもしれないし、あり余すだけだった時間の本来の使い方を知った時だったかもしれない。
結果、予餞会は大好評のうちに終えることが出来た。あの頃、その時の大事な思い出。

実家に通って片づけをしていたが、先週末に兄がひょっこり帰ってきて、かろうじて残った実家を取り壊すことにすると容赦なく言い放った。逆に言うと片付ける必要は無かったと言うこと。下の二曲は、その時の次男の心情を表している曲名のような気がする。

今聴きかえしても、逆に新鮮さを感じる曲。

 なんだったんだ?7DAYS

 

 負けるもんか

 

 女ぎつねon the Run(アサヒ「三ツ矢サイダー」CMソング)

 


泥まみれの楽譜の下に、幾度目かの停学中に詩を書き綴ったノートを見つけて、あわてて瓦礫を退けて地中深くに埋めた先週末のこと。

2011-04-02

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戦場みたいな惨状を洗浄

朝から床や箪笥をヒューヒュー口笛吹きながら、ジャージャー水洗い。
実家に通いつめて、一生懸命に復旧作業をしてきたのだけれど、結局、取り壊して他所に移るとか。母と兄は、経過について一生懸命に話すのだけれど、結果は出さずに会話を完結させる。ブレる二人の間でキレる次男。

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