2011-06-29

日本蛇舅母

帰宅して玄関ドアを閉めるやいなや、母屋のほうから靴音高らかに彼がやって来た。

蝶番を軋ませて開け放った玄関先から、自慢に満ちた声で私を呼ぶ。
返事はしたものの、ゴムベルトが汗でまとわりついて腕時計が意地悪した。

風通しの良さそうな容器(もの)を、そっと静かに両手で持ちながら、「今日さ、○○くんに貰ったんだよ」と彼は緑色した虫かごを見せる。
透明なプラスチックの開閉蓋の右上に、体長十五センチほどした爬虫類が格子にしがみついていた。

「貰ったって云うかねぇ、イモリと交換て云われたんだけどさ」と申し訳なさそうに私を伺い見る。
先達て、捕獲に成功した三匹のイモリに、すっかり情愛を寄せてしまったので、その週末、若手のトレード要員を探す事で交渉する様に云った。

早速、四十五センチほどのプラスチック容器に腐葉土を敷き詰め、庭に転がっていた石を重ねて隠れ家を作り、刺身用の小鉢に水を入れて設置した。

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彼は二三日も過ぎると、カナヘビに対する興味が、私が若い時分に経験した失恋の痛手のようにあっさりと消えてしまった。
それは、今回のカナヘビに限った事ではなく、ありとあらゆる、その時時で興味を抱いて持ち帰った生物に対しても同様の事だった。
おかげで、今後、将来的に、もし転職を考えた際に書くであろう、履歴書の趣味欄に「生き物の飼育と観察」と書き記す事が出来るくらいになってしまった。

云わば、彼が捕獲マニア、私が飼育マニア、と結果的にバランスが取れてしまった。

生き物を飼育する上で、一番厄介なのが生きた物しか食さない方々の餌の確保であって、今回仲間入りしたカナヘビ様も生き餌しか食さない部類だった。
彼に学校の帰り路、餌用にヒシバッタだのコオロギだのワラジムシなどを捕獲して来いと、毎日云って送り出すのだけれど、帰って聞いて見れば、決まって、あっーと叫び声を上げて、シマッタと云う顔を作るばかり。

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午刻、緑地公園などでプラスチック容器をぶら下げながら、額に汗して苔の生えた木っ端や石をひっくり返して、時折、頓狂な声をあげているあやしい中年を見かけたら、間違いなく、それは私だ。

2011-06-28

Poladroid

昨日の最高気温が十五度弱だったり、はたまた今日三十度超だったりな日々、この二日間で二ヶ月な気温変化と、水分を含んだ宙空を彷徨いながら、しんなりした日々を過ごしております。

いつもお邪魔させて頂いている先で 「poladroid」と云うソフトの事を知りました。
複数のJPEG画像を続けてドラッグ&ドロップすれば、仮想インスタントカメラで次々と撮影することができ、デスクトップ上にインスタント写真がどんどん排出される。デスクトップ上のインスタント写真はあくまでプレビュー用で、現像が完了すると同時に、変換後のJPEG画像があらかじめ指定したフォルダへ自動保存される仕組みだ。

窓の杜 - 【REVIEW】撮影音や現像過程もリアルに再現する仮想インスタントカメラ「Poladroid」
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変に絞ったりしたモノはソレっぽくならないので、ソレっぽくてソレらしい平べったいモノを素材にしたほうが良いみたいです。面白いです :)


※6月17日にアップした記事が忽然と姿を消してしまいました。スターを頂いた方々申し訳ありません。

2011-06-15

イモリは両生類 ヤモリは爬虫類 タモリは哺乳類

震災から三箇月経ったが、他所宅の状況が色々とわからないものだから、休みの日に、子供らが友達宅に遊びに行く事を止めている。

自ずと子供らは色々と余してしまい、油断していると、一日中うだうだとゲームばかりしてしまうものだから、陽のあるうちは出来るだけ表に出て自律神経をちくちく刺激して遊べ、と云った時点で、これ当然と球技遊びなどに散々付き合わされ、不器用な私は大人気無くはしゃいでしまって、二三日後に訪れる身体の痛みに後悔する事は既にわかりきっている。
いっその事、私のテストステロンのように、年年失われ続ける自然の中に連れ出したほうが、何かと都合が良いと思い立ち、子供らを自動車(くるま)に乗せて山深い地に向かった、先週土曜日の事。

じつのところ、二三年ぐらい前より、彼と捜し求めている水棲生物がある。
近場の田圃やら沼地などを探索しているのだが、未だにお目にかかれていないのが現状。

以前、直下に渓流を眺める緑地公園に行った際、甲虫類 *1 目当てに地面で息絶えている朽木を次次ひっくり返していたら、突然、赤腹の親分が尾っぽをちろりとさせて姿を見せた。彼と二人して頓狂な声を上げながら、あたふたしていたならば、赤腹の親分は落ち着き払った様子で草陰に姿を消した。

それからというもの、私は幼い頃の思い出探しに、彼は幼い頃の思い出作りに、この時期になると天気と時間が許す限り、赤腹の親分を捜し求めるようになった。決して惚れ薬の精製を試みようとしているわけではない。

結果、三匹の家族が増えることになった。名前はまだ無い。

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水槽容器の中で、悠悠閑閑としている様をぼんやりと眺めているだけで癒されるのだけれど、細君の眉皺寄る無言の訴えが厳しい今日この頃。


*1:カブトムシ、クワガタムシ、カミキリムシ等。

2011-06-14

そうやすやすと

最近、めっきり随筆の類しか読んでいない。

しかし、川上弘美、町田康、内田百聞、とはキングのベルウッドスペシャルコンボ *1 並であるななどと我ながら関心したりする。
そろそろ、結末でひょぉと唸る様な、急転直下な展開技法が優れた書籍を欲してきたので、そろり、本棚に並ぶ積読本を眺めて、やはり、ジェフリー・ディーヴァー先生、これ、ひとつお願いします、と読み始めるのだけれど、ある日を境にして、ひとまず置いておいて、繋げてみたり、膨らましたりして読むことが、未だに億劫になってしまっている。

もう少し、出来るだけ、やわらかめの書籍を読んでリハビリすることにしようと思った次第。



*1:「鉄拳6」3Dタイプ対戦型格闘ゲーム(ナムコ)。

2011-06-13

The Girl with the Dragon Tattoo

ハリウッドリメイク版の監督がD・フィンチャーで、ヒロインのリスベット役の候補がキャリー・マリガンとか... 名探偵カッレなミカエル役がダニエル・クレイグ!?
01 July 2010 wrote:「ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女」


先日、米国リメイク版(デビッド・フィンチャー監督)のポスターとトレイラーが発表されました。

オリジナル版の評価は高いようですが、ミカエル役のミカエル・ニクヴィストは、到底プレイボーイには見えなくて、終始残念感が漂いましたし、リスベット役(ノオミ・ラパス)にも、今ひとつ魅力を感じませんでした。作品も原作を忠実に表現しようとしたあまり、展開があわただしく感じ、非常に残念に思いました。

リメイク版は、天才ハッカー女調査員リスベット・サランデル役、ルーニー・マーラの過激なヌードポスターが話題になっているようですが、予告を観る限り、なんとなく期待できそうな感じです。
12月21日米国公開予定。日本では来年2月頃、劇場公開の予定とのことです。



予告編では、トレント・レズナー(ナイン・インチ・ネイルズ) FEAT. カレンO(ヤー・ヤー・ヤーズ) による、レッド・ツェッペリンのカバー曲「移民の歌」が使われたりするので、否が応にもキングコング・ニードロップ的に気分は高まります。

brody

2011-06-10

堕天使の旅路

自動車(くるま)を運転していて、すこしばかり油断していると、ケムシをうまいこと避けきれず、危うく轢きそうになること度度。

最近、頓に道路を横断するケムシが多い。完全変態に向けて、好みの草葉をたらふく食するため、餌(草)場を頻繁に移動するためなのだろう。ケムシは成虫になるため、これ即ち、くびれ(頭部・胸部・腹部)を拵えるためにウィーキングをしているということであって、二十代から三十代女性が、ウォーキングをはじめる半数以上の目的と同じことと思えなくもない。

ケムシが道路を横断する速度は、昔に比べると格段に速くなったように感じる。朝夕「はいっはいっはいっ」と拍子をとりながら、日課のウォーキングを勤しむ、近所のトクジロウさんのウォーキング速度並みであるように思えなくもない。

午刻、所用で自動車を運転していたら、ひたむきに青春を謳歌すべく、左から右に横断するケムシを見かける。その必死なケムシの様子を見ていたら、この頃、辛くあたる陽の光に熱せられたアスファルトが、この上なく熱いものだから、自然と早足になってしまう、ちょうど、暑い盛りに、海辺を目指して、不用意に太陽に熱せられた砂浜に足を踏み入れ、ポップコーンみたいに跳ねまわりながらも、爪先立ちで疾走する、そんな感じなのだろうか。ケムシの這い回る速度向上も、少なからず地球温暖化が影響しているかもしれない。けれども、そもそもムシに熱いだの冷たいだのを感じる、複雑な神経伝達回路は備わっているのだろうか。たぶん、生命を脅かすような危険を察知して、対応する感覚だけなのかもしれない。

────などと、ひとしきり考えていたら、生命に関わる事態を察知して、腹のムシがぐうと鳴った。

2011-06-09

屈折する陽光

六月に入る成り、これ非常に多忙となり、なんだかもう、気分的にも曇天の極み。
色々と書きたい事、多々あるのだけれど、あれこれと纏めきれずに、なんだかもう、下書き保存。

そんなこんなしていたら、会社のパソコンがうんともすんとも云わなくなる。
なんだかこれ、ハードディスクが寿命を全うしたらしく、潔い事この上なしと早々と諦め、以前(まえ)まで使用していたノート型パソコンを引っ張り出し、電源ボタンを押(い)れたなら、大きくしゅぅぅぅーと息を吐いた後、青い画面(かお)してうんともすんとも云わない。なんだかもう、滂沱の涙。

昨日、朝から、パソコンとマイクに向う、お偉方とのちくちくした会議が終わり、ひと安堵な昼休み。

自動車(くるま)の座椅子を押し倒し、靴を脱ぎ放ち、開け放った窓から右足を放り出して、熟成しているであろう香を放っていたならば、読書に集中できないぐらいに、外がやいのやいの喧しい。
もしや、濃縮した香ばしい小生の足香が原因の騒ぎではなかろうかと、少しばかり心配になり、ひょいと顔を上げて窓の外を窺い見た。
駐車場には、老若男女問わない従業員が、西の空、すなわち、小生の自動車のうえあたりを見上げている。卒倒している者が多数の様子ではなかったので、臭気、とりあえず安心。

皆が見上げる先、助手席側の窓に目を移して空を眺め上げれば、横に伸びる、荘重で優雅な姿態した虹が見て取れた。

めずらしい、はじめて見ただの、まあね、小生もそのような思いなのだけれど、やはり、ほら、放射能が影響して云々だとか、三ヶ月経った今だから、やはり、ほら、磁場の影響が云々だとか、云っている輩の声が聞こえはじめると、なんだか、段々とこちらの方の磁場が狂いだし、激昂。
こらこらこら、おまえら、悪戯に適当なことばかりのたまっている場合でないぞ、と自動車から降りていけば、おやおやおや、これはこれはマツダさん、どうもどうも、今日は著しく暑い日でやんすなあ、などと挨拶してみるも良し。

太陽光が屈折することで発生する「環水平アーク」と云う、珍しい現象らしいのだが、小生にしてみれば、老若男女な従業員皆が、横並びで、一様に同じ角度で携帯電話を空に向けてる様が、なんとも、ちゃんちゃら可笑しくて、態態、此方から眺めてほくそ笑んでた。

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────支離滅裂な駄文稚文申し訳ありません。

2011-06-07

amanogawa

茹だりながら仰いだ空には、その時期、雪の上に除雪車が残したキャタピラーの跡に良く似た形の雲が広がっていて、僅かばかり涼を感じるのですが、すぐに空はふやけて霞んでしまう今日この頃。油断していたら、すっかり今日は七月七日です。

細君と一緒に自動車で出かける際には、大概、佐藤竹善の曲が流れます、流されます。普段、一人の時には進んで聞く事はありませんが、佐藤竹善似のエディ・レジェンドがヴォーカルのMAD3(2009年解散)の楽曲は好んで聴いたりはします。

しかしながら、七月に入ると決まってインパネに無造作に投げ出された iPodをくるりくるりと操作して、会社帰りに聴いている佐藤竹善が歌うカバー曲 *1があります。月がとっても青いわけでもないのに遠回りして帰ることも多々あります。



置いてけぼりにしてしまった切れ切れの淡い若い時分の想い出に、色々とむせ返ったりもします。