2011-03-30

佐々木さん家の事情

今回の震災で住む場所を失った、または相当な被害を受けてしまった人の大半は、沿岸沿いから内陸へと移り住むとのこと。

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実家の近所の家は、2階部分だけとか屋根だけが、実家(うち)の裏に流されてしまっていたり、その痕跡すら無い状態だったりする。そんな瓦礫の中に実家はひっそりと建って(残って)いる。

とは言え、震災直後の1階には、贔屓目に見ても部屋数より多い畳と、畳を剥ぎ取った後に丁寧に敷き詰められた泥、漁業関連で使用されるフジツボだらけの黒やオレンジ色した浮き球、ラグビーでトライを決めたばかりの箪笥の山。すべての窓や扉のたぐいは、その頃に庭と呼んでいたあたりにガラスの破片とともに吐き出されていた。気を利かして残してくれた痕跡(あと)から判断すると、2mぐらいは一時的に浸かったと思われた。

母は、RINGS(リングス)立ち上げ当初の前田日明並に、左膝に爆弾を抱えている状態。兄は無事ではあったが、甚大な被害を受けた南の沿岸部で、思うように身動きが取れない地方公務員の立場。私の勤務する会社は、出社可能な勇士達により、震災から三日後には稼働を再開した。勝負は正味五日間と決めて、実家の片づけを始めることにした。私の住んでいる場所から、実家までの道程は片道5キロほどだったが、ガソリンが枯渇状態のために自転車で通った。

海水をたっぷり含んだ畳でオセロ、天井まで積み上がった箪笥でジェンガ、浮き球でナインボール、10センチほどの泥で棒(サッシ)倒しを、4部屋とトイレ・洗面所で筋肉痛を忘れるほどに楽しんだ。他、毎日18リットルポリタンク2つ分の水と灯油で無酸素運動、バイク(自転車)で10kmの有酸素運動で、雑誌ターザンの特集「夏までに太らない体を一週間で作る」みたいな生活をする。おかげで、以前に現UFC世界ウェルター級王者ジョルジュ・サンピエールに憧れて、熱心にウェイトトレーニングをしていた頃に、作り込んだ時の筋肉(にく)が復活した。あわせて体重も3kgほど落ちたが、歯痛に悩まされることになる。

実家のあたりは、今も電気は来ていない。先週土曜日から水は出るようになった。母は一時的に避難する場所を複数選択出来る状態 *1 でありながら、被害を受けなかった2階に寝泊まりしている。少なくとも二日にいっぺんは、風呂の日と決めて迎えに行き、洗濯物のローテーションや、必要物資などを運んでいる状態。なんでも他所に移ると、意思に反して出るべきものが出なくて、切ない思いをするのが嫌ならしい。まわりに無駄に気を使うことなく、自分のペースで生活したいのが、あえて避難しない一番の理由なのだろうと思う。

将来的には、同じ場所に家を建て直して(または改装)住む決意を固めているが、まずは携帯電話を持つことから始めてもらいたいと、次男は切に願っている。


*1:近くの避難所、私の住んでいる家、兄のアパート、自身の秋田県の実家など。

2 件のコメント:

  1. sharon様
    なるほど、震災は思わぬ輝かしい副産物をsharonさんに与えたのですね。
    笑いながら、楽しみながらやる練習こそ、苦しい練習、鍛錬であるべきです。
    苦境の中でこそ男は磨かれるものなのですね、ハルマゲドンしかり
    勉強になります。

    とは言え、義援金だ、物資を送ろうと西日本で騒いでいるのはごく一部のような気がしてなりません。
    サッカー選手が日本は1つと叫んだところで、50Hzと60Hzくらいは違うようです。

    東京電力を助けるなら、東電の地域内でやれよ
    税金なんぞ、使うんじゃねえぞと隣の奴が言ってました。

    震災泥棒すら現れる始末ですもの。
    世知辛い世の中です、何を信じてよいものやら。

    ただ、母は強し。僕は頼りないと思われている長男です。
    国家公務員の弟の意見は聞く耳があるようですが、長男の言うことなど・・・

    愚痴になりました。                 荒木

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  2. 荒木さん、いつもコメントありがとうございます :)
    隣町が酷いと噂を聞きます。スーパーやパチンコ店から金庫を奪われたり、避難場所で被害にあった店舗から酒類を拾って?来て酒盛りして盛り上がっているとか、避難所で登録していないのに配給物資を力ずくで貰おうとして、小競り合いになるとか、世知辛い世の中です。しかし、信号が死んでいる道路での交通マナーには関心したりしてます。
    大きな余震に慣れっこになってしまった今が一番怖かったりしますね。

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