2012-02-12

Case20120212-1007

彼女に友達から遊びの誘いの電話があった、日曜の朝。

歩いて行くには少しばかり遠い道程なので、車で送って行くことにした。
国道沿いではあるが、防潮堤で仕切られた河口部の海沿いでもある場所。
元々の住んでいた家は、その被害にあって、今は間借りしているらしい家の前に車を止めた。
彼女は助手席から足早に玄関先に姿を消した。
冠水注意の立て看板が、交差点の門でかたぴし風に揺れている。
風にのって波の音を耳にした。


2012-02-08

Case20120211-1128





                            \ドヤ!/


甘いエゾリンゴを頬張るヒヨドリと甘い焦点。

爪先立ちの男

震災で半壊と化した実家の後片づけをしていた頃のこと。

被害が少なかった二階へ向かう階段の上りきった先には、更に階段が増えていた。
精も根も尽き果て、かろうじて壁にもたれている箪笥の、階段と化した引き出しに、そろり、慎重に足をかけ、壁づたいに上った。
箪笥の天板と天井のわずかな隙間に無理やり上半身をねじこませながら、「これでも若い頃は...」などと、云うことを聞かなくなった身体に毒づいてみた。箪笥がさえぎっていた向こうの状況を確認していると、天板の角でこらえ性のない腹筋がうめき声を洩らしはじめた。

箪笥と天井のわずかな隙間で、可能な限り身をよじって仰向けになりながら、引き出しにかけた両の足、左、右と順番に引き上げる。
左足の踵を天板の角に引っ掛けて、右足を引き上げようとしたら、つま先あたりからするり、足首になにかが引っかかった重みを感じた。
重みを感じたまま引き上げてみると、古びた革のストラップが引っかかっている。ストラップの先は引き出しの中で隠れていて見えない。
引き上げた右足首からストラップを外して、慎重に引っ張り上げてみたら、カメラの形をした革のケースに「OLYMPUS」の刻印。
はめた軍手をするりと外し、丁寧にスナップボタンを開くと「OM-1」の文字を目にした。

とりあえず箪笥が元あったであろう位置に動かし、あらためて引き出しの中を確認したならば、タテにレンズが二つ並んだカメラを発見。
「Rolleiflex」の文字を目にして、猫の額ほどの空間で思わず小躍りした。と、よくよく見直してみたならば、これ「RICOHFLEX」だったり。*1



写るかどうか、それ以前に写せるかどうか不安だったり、色々ばたばたしていたので、まだ確認していない。
年が明けてから、こうしてダイアリーやブログを書けるぐらいな状況になったので、暖かくなったらフィルムでも入れてみたいと思っている。
正直なところ、「稔る田」に少なからず刺激されたことは、否めない事実。



そして今日、「OM」シリーズのデジタル版「OM-D」が発表された。


*1:ジミーさん色々有難うございました。

2012-02-04

積もり、逝く者

重々しい鉛色した空の抑制が効かなくなりだし、途端に、喜び祝うように紙ふぶきを吐き出し始め、みるみるうちに大地に真白い雲をこしらえた。



雪は、なく。

陽光に照らされれば、跡形もなくなる短い生涯を嘆き悲しみ、なく。
きゅっきゅっ、声をだして、なく。
凝り固まって、ばりばり、声をあげて、なく。
最後を惜しみ日陰で膝を抱えて涙を流して、なく。

程なくして雪は、なく。