特に題名になっている「お父さんのバックドロップ」は、プロレスに熱狂した世代、いや「1・2の三四郎」世代にはたまらない作品だと思います。
2004年に仮面ライダーオーズの鴻上ファウンデーションの会長(宇梶剛士)主演で映画化されてます。
ずいぶん前に観た記憶しかありませんが、よくぞ数十ページの短編を約一時間半に作り上げたと関心しました。ストーリー的にベタですが、とても良い作品だと思います。
中島らものプロレスに対して、並々ならぬ愛情を持った上での核心的な、原作のいちシーン。(以下一部抜粋)
~ファミレスで息子にプロレスで悪役をしている父を尊敬していないと言われる。父親が自分のプロレス(会社)での悪役(仕事)について説明する~
「(略)たとえばギャング映画を作るのにだな、出る役者みんながみんな、善玉の役をやりたいといいだしたら、どうなる?映画ができないだろう。お客さんが楽しんで見てくれるものにするためには、そういう、そんな役まわりをする人間が必要なんだ。」
(略)
「おまえのいっている小学校だって、そうだろう、花の世話する当番の子もいれば、便所掃除の当番にあたる子もいるじゃないのか。」
(略)
「世の中なんて、みんなそれぞれの役割でなりたつんだ。便所掃除をさぼって、花の当番ばかりしたがるやつがすきか?」
「みんな自分の役割をはたすために、つらい思いもするんだ。おれが毎日毎日バットで腹をなぐらせたり、砲丸を腹の上におとさせたりしてきたえているのはなんのためだと思う?」
「強くなるためでしょ?」
「すこしちがう。トレーニングをするのはな、<ケガをしない>ためだ。」
ーそれでも息子に尊敬できないと言われる。父はオリンピックにまで出たアマチュアレスリングの選手なのにコーチになるなどして、なぜ続けなかったかと問われて言葉に詰まってしまうー
「かわりにいってあげようか。ほんとのスポーツの世界には、ほんとの勝ち負けがあるからなんだ。」
「お父さんは、そのほんとうの勝ち負けのある世界に、ずっといるのがこわかったんだ。だから、みどり色の霧をふいていれば、どっちが強いかよくわからない世界に逃げたんだ。だから、尊敬できない。」
「カズオ・・・・・」
~閉口してしまう父。これをきっかけに(当時)世界最強といわれる空手家に異種格闘技選を挑むことを決意する~
*1:モップ絞り機。
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