2010-11-12

季節は赤緑白に変わる頃に

IMG_1016

お気に入りのアバクロのパーカーのフード内側が、なかなか乾ききれず、なんだかシメっとしていてイライラが募っている。
はたと気付けば、来月はいいとこどり的な西洋のイベントが控えている。一家のサンタクロースを一手に引き受けている身としては、そろそろマーケティングリサーチを始めなきゃならない時期でもある。
毎晩、子供らといっしょに風呂に入るが、風呂では、その日あった出来事などを逐一報告される。子供と真っ当に会話が出来るようになってから、随分私は聞き上手になった。
順繰りにシャワーに向かって、頭を突き出して泡を流しながら、「あっー、そうそうママがね、サンタさんからメールが来たって言ってたよ」きゅるるるしゅっぱっと、勢い良くレバーをまわしてシャワーを止め、容赦なく顔に流れ落ちるしずくを忙しく右手で拭いながら、「ぶばぁぁっ!」一旦言葉を吐き出して、「んで、ぶはぁっ、なんて?」二度、三度しずくを払い、「それでなんて書いてあったって」と目をしばたたかせ、おぼれかけているような必死な形相で彼は見つめた。その影で左のわきの下を丹念に洗っていた彼女も手を止めて見ている。
「もうすぐクリスマスだけど、プレゼントは何が良いか聞いてくれ、と書いてあったらしい」
小学4年生ともなれば、サンタクロースの存在について薄々感づいてる。むしろ、当然気付いているはずだ。小学校にあがる頃、「サンタはパパでしょ」みたいなことを口にしかけたときがあったが、妹の手前からか、それ以上は口にせず、初めて見る顔をつくったことがあった。
去年はたしかと思い出していたら、「おーけー!おーけー!DS。DS。あっうん、ライトの中古でいいよ」彼の机の引き出しの奥でひっそりと眠っている、片側のヒンジ部分が壊れているDSのあわれな姿が目に浮かんだ。「それとソフトをひとつ。それも中古でいい。それで(DSの)新品を買える金額(ぐらい)だとおもうから十分でしょ、...だよね」何かを見透かしたうえで、現実的なプレゼントを望んでいる。
その傍らで身体の泡を流しながら彼女は、「○○○はねぇー...」とシャワーを出しっぱなしで黙考している。「あーうん。そーそー...」と続ける彼女、「赤ちゃんがほしいの。本物の、そう、生きている赤ちゃん」彼は「ハッ!」と振り返り、微妙な表情を顔にこしらえながら、流れ落ちるしずくを右手で払った。湯船の中には死後硬直が始まりかけている様なお父さん。「だめぇ?無理ぃ?」。生え始めた小さな前歯と、そこに生じた大きな隙間を見せて、いたずらっぽく笑って見せた。愛育人形が大好きで、気づけばそこここでお世話をしている。添い寝してお腹をポンポンしながら、人形を寝かしつけていたりもしている。この間、義弟夫妻の生まれたばかりの赤ん坊と対面したときのテンションが、2010年の中国の軍事費並みだったから、その影響からかと、ぶくぶくぶく...。
その様子を彼女は覗き込みながら、「大丈夫、大丈夫。○○○がきちんとお世話するから、約束するからぁー」浴槽の中で半ばおぼれかけている父、その父を棒でつつく様な妹の様子を見かねたかように、「ママに3回もお腹を切らせるの、か」と彼。
一瞬、シャワーの音だけが響き、鼻のあたりまで浴槽に浸かってしまったお父さん、目だけを動かして彼女を伺う。
「...あー、そうか、そうだね。じゃね、えーとプリキュアのシフレとコフレとポプリ、コッペの...」
予想外に、あっさりと第一希望のプレゼントを諦め、フランス語みたいなプレゼントを語る彼女に、ぶくぶくぶく...。
おぼれかけている父に、そっと浮き輪を投げた彼には、新品のDSでもと考えながら、ぶくぶくぶく...。
ぶくぶくぶく...。

IMG_1065.jpg_effected-002

IMG_1143

0 件のコメント:

コメントを投稿